今日、わが国で「セールスマン」と呼ばれる外交的営業職の業務的なスタイルは、第二次世界大戦後に米国から「輸入」されたものだと言われています。
いわゆる戦前の日本に見られた「お得意様周り」とは性質を異にしており、徹底した成果主義、効率重視、利益率重視が求められる職種に変貌しています。
ところが、戦後も既に75年が過ぎまして、セールススタイルも日米間で微妙に変化を遂げるに至りました。
ここでは、タイムマネジメントを例に採り挙げながら日米のセールスマン事情を文化の差異というパラダイムまで「そもそも論」的に説明をしています。
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米国のセールスパーソンの場合、シングルタスクに徹する
米国の事例を考えてみると、マルチタスク業務は神話だとされています。
セールスパーソン(セールスマン)として、ある1日で一度に多くの異なる仕事を切り回しているとします。
これは生産的であると感じられるかもしれませんが、真実は別の側にある、とするのが米国的な発想です。
作業の質と細部への注意はおおいに減退することが多いとのことです。
心理学的に見ると、あるタスクから別なタスクに切り替えるのに脳に時間がかかります。
この時間の間に仕事への集中心が失われて、生産性が大いに損なわれます。
その結果、マルチタスクを行うと生産性が40%も低下してしまいうのです。
それは脳がギヤチェンジをしてタスクに焦点を当て直しているからです。
最大の結果をえて、適切なフォーカスを維持し続けるには、米国のセールスパーソンでは一度に一仕事を1日でこなしていくことが推奨されています。
ルーチン化して作業を効率化する
これを効果的に成し遂げるには、似たようなアクティビティをグループ分けして、脳がすべての場所でスイッチを入れ直す必要がないようにします。
例に、見込み客への電話営業を考えてみよう。
電話をかけて、見込み客にボイスメールを残し、フォローアップのEメールを書き、それを送信して、この活動をCRMに登録して、翌日見込み客をフォローするための新しいアクティビティを設定して、次の見込み客に移ります。
これでは脳の至る部分に負担をかけて、多くの時間を食い潰してしまいます。
その代わりに、見込み客への電話営業を効率を考えてルーチンに切り分けします。
- ダイアルを回してボイスメッセージを残すことをすべて自分で行うとして、割り当てられた時間の中で何件の見込み客に合理的に電話をかけられるかを検討してみます。
- 電話をかけるための時間の前に多くの見込み客のことを調べます。
- 電話をする時間になったら調べ上げた見込み客のリストを取り出します。
- それぞれの見込み客に電話をかけて事前調査に基づいたパーソナライズされたボイスメールを残します。
- 電話にかかった時間だけをCRMにログ記録させ、リストの次の見込み客に迅速に移動します。
- その日のリスト分について上記の作業を繰り返します。
- スケジュールしていた「管理時間」の間に、電話をかけた見込み客のリストに戻って、フォトーアップのEメールを送信します。
- メールを送った後で、これらの見込み客に再リーチするための時間をCRMに設定します。
このようにグループ分けすることで脳を一度には一事に集中させておき、それぞれの時点での電話作業の効率を向上させて、電話で誰かに話を実際にする活動の効率を改善します。
こうすることで、米国式事例では、セールスパーソンとそのチームのための営業成果の機会を増やすことができます。
日本の営業マンはマルチタスクを推奨
一年に高級会社を100台以上売り上げるセールスマン(営業マン)はマルチタスク型の多才なビジネスマンです。
彼の行動指針メモを譲り受けたので、差し障りの無い範囲内でここで情報開示をしてみましょう。
先ずは、予定は午前・午後で、ジャンル別に集約することを心がげています。
この辺りは上述の米国のセールスパーソンとも共通していて、頭の中の情報を切り替える時間を減らすために同じ分野の仕事はまとめておくそうです。
米国のセールスパーソンはCRMという電子的な手段を用いていましたが、日本の優秀なセールスマンは手帳を愛用しており、その手帳の左右を午前と午後に分けて、顧客の名前だけを記入しており、お得意先の700件の情報は専ら記憶に頼っています。
メモはあくまでも控えに過ぎないとのことだそうです。
商談後の事務作業は3分、10分、30分の時間刻みで管理をしています。
肝心なのはあくまでも商談です。加えて、商談のアフターフォロー以外の短時間で終わる事務的な作業は、3分、10分、30分の作業という風に分類をして付箋を貼って、机の上で管理をします。
作業が終わったら1枚づつに付箋を捨てていくそうです。
チームや部下の育成はどうしているのでしょうか?
高級会社を年間で100台以上売ってのける営業マン氏所属の支店の後輩には意識して営業ノウハウや時間管理の方法を教えてはいないそうだというのは日本的なというか「以心伝心」的なコミュニケーションです。
優れた方法は支店全体に自然と波及して残業も少なくなります。
営業年度の最優秀販売拠点に選抜されたこともあるというから凄いものです。
年収の高い営業マンの時間の使い方のコツ!マニュアル化して、作業に落とし込む
上記から分かるように、日本的な営業スタイルではタイムマネジメントに経験と勘を幾分か導入しているのに対して、米国スタイルでは徹底したマニュアル化(マニュアルを実際に作っていないにしても)、ルーチン化を試みており、職人芸というよりは標準化された作業に落とし込まれています。
セールスチームへのノウハウの伝授にしても日本は言語化したコミュニケーションを採らずに、専ら「以心伝心」に依拠するところが大なのです。