かんぽ生命保険と日本郵便による保険の不正販売問題では、過去5年間の全契約3000万件について、本人の意向に沿っていないものがないか昨年から書面を送って確認しています。
ただ、回答は1割に満たず、郵便局員に言われるままに契約し、何もわからない状態で放置している人もいるのでは。専門家は、高齢者の家族ら周囲の人も一緒に、かんぽ生命の保険の有無と内容をチェックしてみてと呼びかけます。
ノルマがきつくてもやってはいけない!生命保険の営業マンなら必須!かんぽ生命の不正契約の基礎知識
不正問題の調査結果
過去5年間に(2014~2018年度)のかんぽ生命の全契約者1900万人について意向に添った契約なのかを検証しました。昨年10月までに返信用はがきを同封し書面を発送しました。意向に沿ったものかを尋ね、「はい」か「いいえ」で回答する形式です。自由記述蘭もあるが、意向に添い、意見のない場合は返信は不要としています。はがきの内容をもとに詳しく調査し、契約者が郵便局に連絡した場合も訪問するなどしています。
ただ不正問題を調べる特別調査委員会が公表した報告書によると、2020年12月13日時点で回答したはがきは約103万件(約3%)にとどまります。その調査も終わっていません。
これとは別に、「顧客に不利益を与えた可能性がある契約」約18万3千件を抽出し「特定事案調査」として重点的に調査しました。判明分で法令・社内規定違反のある事案は約1万3千件に上り、48件の法令違反と622件の社内規定違反がありました。
不正の原因「乗り換え契約」について
確認するポイントの一つが、既にある契約を一旦解約するなどして新規に換える「乗り換え契約」。
生活環境や年齢、金融状況のあわせ補償内容を見直す狙いだが、乗り換え前より予定利率が下がって保険料が上がるなどの不利益が生じる可能性があり、保険業法では不利益を告げずに乗り換えさせることを禁じています。
一連の問題ではこの乗り換えを悪用するケースが目立ちました。徳悦調査委員会の報告書によると、14年度以降にあった不利益が生じた可能性のあった事例として、終身保険から終身保険への乗り換えで補償内容は変わらないのに保険料だが上がるものや、満期が間近の養老保険を解約させ、新規の養老保険へ乗り換えさせたものもありました。特定事案調査の対象も乗り換えが中心です。
確認の際に必要なのが、保険証書です。保険の不利益事項などの「重要事項説明書」もチェックします。契約時の本人のメモなども大切な証拠です。紛失に備えコピーや写真に残しておきます。複数の保険に入っていないかや、短期間に解約と契約をしていないか、満期が近かったのに解約された保険なども確認するようにしましょう。
高齢者の中には、目的がわからないまま保険に入っている人も少なくありません。特に郵便局への信頼は厚いため、保険に入った理由を「局員から頼まれた」「付き合い」などと話した時には注意が必要です。あるファイナンシャルプランナーは「なんの保険に入っているかなどは普段聞きにくいかもしれないが、もしもの時に備え家族で共有しておくべきもの、今回のことをきっかけに話し合ってみて」と話します。
不利益が生じた可能性のある具体例、
- 終身保険から終身保険への乗り換えで補償内容は変わらず、保険料だけ上がった。
- 満期が近い既存の養老保険から、新規の養老保険への乗り換え
- 予定利率が高く、保険料の払い込みも管路湯しているなど、資産価値の高い契約の乗り換え
- 保険期間の途中で補償を追加できたり、特約だけ解約したりできるのに、丸ごと乗り換え
- 同じ恒例の計爵社に、短期間に既契約の減額・解約と新規契約を行った。
- 保健機関の重複や無保険の期間が生じた
企業からの謝罪と対策
これに対し、かんぽ生命の千田哲也社長と日本郵便の衣川和秀社長は
2021年3月24日記者会見し、かんぽ生命の生命保険商品の販売をめぐり、顧客に不利益を生じさせる契約や解約をさせるなど不適切な事案が多数あった問題で、処分対象となる職員が計3300を上回ったと発表しました。一方2020年10月から顧客らに対してお詫びをしてきたと説明して、「重層的なチェック体制も確立できた。(職員らの)処分も一定のめどがついた」(千田社長)とし、昨年4月1日から本格的に営業再開することを明らかにしました。
会見で衣川社長は、新規契約を獲得することを評価の軸としてきたこれまでの体制に問題があったのではないかとの認識を示し、「これらが今回の不適切募集を防げなかった。許してしまった。一種助長したところがあるのではないかといわれている。重く受け止めており、残念」と言及。処分対象者には、不適切な契約を行った社員だけでなく、不適切な手法を指導した社員、それらを黙認した幹部なども含まれます。
衣川社長は「お客様にもう一度信頼してもらうには長い時間がかかると思っている」としつつ、「一個ずつあるべき姿に広げ、成果を確認しながら、問題があれば微修正してあるべき姿に持っていきたいというのが今の姿。次の段階に行くのに問題はないというのが私の考え方」とも語り、事業の再開に理解を求めました。
生命保険営業のノルマが大きすぎると起こりうる!信頼を逆手に顧客を誘導したことが原因
郵便局という信頼を逆手に取って、不適切契約をごり押しした事件でした。契約をとることが目的でなく、あくまで顧客の意向に沿っての契約であり保険商品であるべきだと思います。
高齢者は、保険商品の説明は複雑で難しく、よくわからないまま契約してしまうケースも多いでしょう。顧客の利益を第一に考えた商品説明であり勧誘をするべきです。新契約をとった件数で社員の評価が決まる体制にも行き過ぎたところがあったのでしょう。再発防止のため全力を尽くしてほしいと思います。